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消えた雪
キャンーーーー
子犬の声が響いた。
悲鳴をあげた子犬は地に叩き付けられ、動かなくなった。
子犬は僕だった。
どこに行けばいいか、わからなかった。
さ迷い歩いていた僕は米兵に捕らえられた。
首根っこを捕まれ、恐怖を覚えた。
きっと、僕は助からない。
怯えて、動けない僕を彼等は笑い、投げ捨てた。
崖から投げ捨てられた僕は悲鳴をあげた。
目を開けると僕は天井を見ていた。僕の部屋だった。
最近、よく見るこの夢はあまりに現実味を帯びていた。
目覚めた僕より遅れて鳴る時計を止めて、ベッドを出た。
リビングを暖かくしてくれいる家族のもとへ向かう。
時折、夢と現実がわからなくなる。
どちらが本当なのか。
「おはよう」
ニュージーランド出身の母が挨拶をしてくれる。
日常会話では英語を使わない母だが、英語は教えてくれる。
標準的な英語とは少し、イントネーションが違うがそれはそれで心地よかった。
「…おはよう」
挨拶を返すと母は朝食を出してくれる。
トースト、サラダ、ソーセージに目玉焼き。
ありふれた朝食だが、それが幸せに感じていた。
隣で兄が僕のよりたくさん盛られたソーセージを食べていた。
「ラルフ。今日はお兄ちゃんと一緒におつかい、行ってきてね」
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