道化師イヴ

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道化師イヴ

「聞いたか?城下町に今噂の変わった道化師が来てるらしい。」 城庭の警備を請け負っている兵士の1人が、隣の同僚に投げかけた。 「変わってるって?道化師なんて皆変わりもんだろう。」 投げかけられた兵士はつまらなそうにそう返し、目の前を行く人々を警戒し続ける。 今日から28日間、この国では城と、城下町を中心に国中が祭り状態になる。 そしてこの期間中は、城の庭までが解放され市民でも誰でも立ち入ることが出来ることになっていた。 そのため、今この場には2人の兵士の他、たくさんの市民たちと、また他の配置された警備兵がたくさんいた。 「なんでも、城にいるようなのとは大分違うらしいぜ。奴らみたいにおかしな被り物で頭を覆わず、長い髪を1本に編んでいるらしい。代わりに目鼻が隠れる不思議な模様の面を被ってるんだと。」 最初に話しかけた兵士がとっておきを打ち明けるように声をひそめながらそう言うと、もう1人はそれにようやく反応した。 「面?化粧じゃなくて?」 「面だ。噂じゃ化け物のような目を隠すためだとか言われてるが、芸も一風変わってるそうでな。ただ間違いなく“道化師”ではあるらしい。」 「ふぅん。そいつは少し面白そうだな。いつまでこの辺りにいるつもりかね。」 「さあな。でも祭りの期間中はいるんじゃねぇかな。俺はこの後交代したら見に行くつもりだ、お前もどうだ?」 「のった。ついでに屋台で酒と夕餉だ。」 顔を見合わせてにやりと笑うと、2人は引き続き城庭全体への警戒に集中した。
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