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「もちろん」
「趣味が合いそうですね」
有栖さんの営業スマイルが眩しい。
今回のお客様は、有栖さんの顧客リストに載っている資産家夫婦の娘さんである。まだ未成年だが、彼女は歳不相応に聡明なお嬢様だった。そしてどんなに小さくても、わたしたちの画廊の大切な顧客だ。
条件は『私のお小遣いでも買える絵』。
実は一言で画商といっても、その実態は大きく分けて二つある。ギャラリストとアート・ディーラーだ。
その前に、プライマリー・ギャラリーとセカンダリー・ギャラリーについて話をしなければなるまい。
多くの人がギャラリーと聞いて真っ先に想像されるのは、おそらくセカンダリーのほうだろう。評価の定まった巨匠の作品を売買している。中には贋作もある。要するに絵画の中古商取引だが、絵画に中古という概念はない。
一方のプライマリー・ギャラリーはいわば“産地直送”。直接作家を抱えて展覧会を開き、作品を知ってもらう。扱う作品は未だ世に出回っていないもので、そこが初公開だ。誰も見たことがないから贋作が作られる暇もない(巷には贋作しか扱わない画廊があるというけれど、うちは逆で真作しか扱わない。贋作のない美術商だ)。
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