外国の猫はしたたかただった。

3/5
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
ミッシェルは腰を屈めると、目を輝かせて両手をさし出したジュンにそれを手渡した。 「フフ……二十五万円。買ッテモラッチャッタノ」 「わぁ、いいなぁ。それって、お客さんに?」 「ソウ。帰国スルカラ、記念トシテ」 由紀は不思議に思った。おそらく、その客はミッシェルと『いい仲』なのだろうが、それにしても記念品にしては高すぎる。 バブル期とかならいざ知らず、一介の勤め人のサイフには重荷ではないだろか。それも二度と帰ってこない、つまり、この先イイ事が出来ない相手に対して、だ。 「よく、そんないいヤツ、買ってくれたわねぇ……。お金持ちなの? その人」 由紀の問いかけにミッシェルは、フフと含み笑いを見せた。 「ウン、オ金持チ。ミッシェルが『今度帰国スルノ、デモ、アナタノ事、一生忘レナイ。ミッシェル、アナタトノ思イ出イッパイイッパイ残シテ置キタイカラ、デジカメ買ッテ』ッテオ願イシタラ、スグニ買ッテクレタ」 彼女の口ぶりから察するに、多分同じ手をあっちにもこっちにも使っているに違いない。男ってヤツはホントに馬鹿な生き物だ、と由紀はつくづく呆れた。それとも洋の東西を問わず、オンナってヤツは皆、逞しく出来ているのだろうか。     
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!