猫は孤独を拗らせている

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 きっと、自分と同じように都会に夢を求めて意気揚々とやってきて、その結果、同じように孤独に苛まれながら暮らしているヤツが大勢居るに違いない。 皆表面は何気にしているけども、独りになった事を認識した瞬間の辛さは独り暮しをした事のある人間にしか、理解できまい。   ロクに見もしないテレビをつけっぱなしにしているヤツなんてのは皆そうだ。窓の外で電車の車輪が枕木を渡るゴトンゴトンという音色が、心の傷にツメを立てて引き裂いていく。  その時、ポケットにあった由美のスマホが着信を知らせる音楽を奏でた。 「……? 誰だ?」  表示090から始まる電話番号の数字だけが並んでいて、アドレス帳に無い人物であることだけが確かである。 「……はい。どなた?」  少々不機嫌気味に電話に出た由紀に、相手は陽気に返してきた。 「やぁ、久しぶり!ボクだよ。コージ。」  それは、あの結婚式場を辞めるきっかけを作った元カレ。 「あぁっ? コージィ? あんた、スマホ代えたの?」 「まぁね。どっちにしろ前の番号だと、電話に出て貰えないかも知れないだろ?」 「……絶っ……対に出なかったわよ。……で、今更何の用事? まさか今頃になって、あん時の引っ掻きキズの話をされても、もう時効よ」  明らかに怒気を含んだ由紀の声にめげる事なく、コージはあくまで陽気だった。 
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