猫は孤独を拗らせている

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猫は孤独を拗らせている

 その日の夜。一人暮らしのアパートに帰るまで、由紀はあの求人案内の事をぼぅと考えていた。  『出会い系』……ねぇ。  玄関のドアを開け冷蔵庫のドアポケットを覗くと、買い置きしてあったペットボトルのお茶は賞味期限が切れていた。 「しまった……さっきコンビニに寄った時に買っときゃぁよかった」  三日続けて友人宅に泊り込んだので冷蔵庫の中身など、すっかり由紀の頭から離れていたのだ。 「缶ビールはあるけど……うー……アルコールも四日続くとなぁ。たまには休肝日をとらにゃぁ、健康診断って来週だったよなぁ……」  そういえば、と由紀は思い直して部屋の隅に置いてあった段ボールの中を漁った。 「確か、ママから送ってくれた中に、お茶の葉が……」  がさがさと探っていると、奥の方からビニール袋に入ったお茶の葉が出てきた。 「おぉ、これこれ。とりあえず、お湯を沸かすか……」  由紀は腰を上げ、ヤカンに水を張って火を付けた。 「あ~ぁ。我ながら寂しい生活してるなぁ」  テーブルの上にはさっき買ったコンビニの弁当が、まだ袋に入ったままで置いてある。  由紀は壁に背中を付けながら、じっとコンロの青い火を見つめていた。     
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