あなたを、じっくり、しあわせにすること。

14/15
前へ
/15ページ
次へ
 風呂から上がって火照った体をビールで内側から冷やす。  まだ寒い春の昼下がり、ベランダの向こうでは少し強い風が吹いている。   晴れている眩しい光のせいで、部屋の中が鄙びて陰りを帯びていた。  お互い喉を鳴らしてビールを煽った後、今路はサイパンへ持って行ったキャリーケースを広げた。 「片付けなんか明日にしろよ、今路」 「うん……ちょっとお土産あって……」 「お土産? 何だ? 変な人形とか要らんぞ」 「あった……。そんな趣味悪くねぇよ、オッサンじゃあるまいし」  今路はソファに座って、隣をポンポンと叩く。  千歳はその誘いに大人しく隣に腰掛けた。 「なぁ、ちーちゃん。今日、特別な日……なんだろ?」 「お前が、俺だけのものになるって言ったんだ。特別だろ?」 「うん……だから……これ、役所で貰って来たんだ」  今路は持っていた紙をテーブルに広げて見せた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

122人が本棚に入れています
本棚に追加