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無気力で笑わない長男と、いつも仏顔で何を考えているのか分からない次男、犬の様にコロコロと表情を変える三男。
今路は似ても似つかないこの赤尾家の三兄弟と深く関わる定めにあったらしい。
膝の上に乗せられ向かい合って千歳の太腿を跨いだ今路は、下から煽る様に口付けられて一旦瞼を伏せたが、千歳の濡れた舌が入る気配を感じて、身を引いた。
「何? ヤんの? 俺、ちょっと疲れてるから一回寝たい……」
「初夜だぞ? 今日は特別な日だろ?」
「まだ昼だ、オッサン」
「愛に時間は関係ない」
「愛とか言うな。寒いから」
「言うに決まってるだろ。愛してんだから。お前三十路過ぎて七歳年下の彼氏の家まで押し掛けて来た公務員、舐めんなよ」
「冷静に言葉にされると……寧ろ、尊敬するわ」
「今路、一緒に風呂入ろ……洗ってやる」
「魂胆が見え見えなんすけど……」
そう言いつつもゆるゆると甘えて来る年上の彼氏は、ちょっと無碍に出来ない。
今路は「しょーがねぇな」と呟くと、千歳の手を引いて浴室へ向かった。
湯を張りながらシャワーを浴び、向かい合って抱き合ったままプルメリアの香りのする泡で互いの体を撫で回す。ただそれだけで、衝動に逆上せそうだ。
仕事で何十人、何百人と寝て来た。
両刀ゆえに掘ったり掘られたり、それが今路の日常で、そこにこんな熱はない。
勿論仕事としてのスキルとプライドはあったけれど、我を忘れる様なこの衝動は千歳だけがくれるものだ。
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