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むかしむかし、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでおりました。 お爺さんはある日の仕事の帰り道で、罠にかかった鶴を助けます。 その夜のことでした。 「申す、申す。申す、申す」と、お爺さんとお婆さんの家に来客がありました。 「誰じゃ?」と、お爺さん。 「拙者にござる」 「いや、だから誰なのじゃ?」 「昼に貴殿に助けてもろうた鶴にござる」 「なんと、あの鶴とな?」 お爺さんは驚きました。というより、メチャクチャ怪しみました。 取り敢えず戸を開けるのは待って、まず、お婆さんに相談します。 「婆さん、どう思うね?」 「怪しいことですねぇ、お爺さん。でも、私聞いたことがあります。二つ隣の村の人が鶴を助けたら、その鶴が、若く美しい娘の姿で恩返しに現れ、自分の羽で綺麗な反物を作ってくれたそうですよ」 「何と、ホントか、婆さん」 「ホントかは知りませんけど、でも一時期流行った噂ですよ。その反物はとにかく高値で売れて、その人は大金持ちになったとか」 「大金持ちッ。ならすぐ開けるぞ、婆さんッ」 そう言ってお爺さんは戸を開けました。 そこにはごっつい浪人が立っていました。 「婆さんや。噂の鶴は若い娘だったんじゃな」 「ええ。そうです」 お爺さんは浪人を見て、 「チェンジじゃ」 戸を閉めました。 「待ってくだされ。待ってくだされ。拙者、鶴にござる。雄なだけでござるッ」 そんなこんなで、お爺さんは鶴の浪人を家に置くことにしたのでした。
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