8人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
壱
むかしむかし、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでおりました。
お爺さんはある日の仕事の帰り道で、罠にかかった鶴を助けます。
その夜のことでした。
「申す、申す。申す、申す」と、お爺さんとお婆さんの家に来客がありました。
「誰じゃ?」と、お爺さん。
「拙者にござる」
「いや、だから誰なのじゃ?」
「昼に貴殿に助けてもろうた鶴にござる」
「なんと、あの鶴とな?」
お爺さんは驚きました。というより、メチャクチャ怪しみました。
取り敢えず戸を開けるのは待って、まず、お婆さんに相談します。
「婆さん、どう思うね?」
「怪しいことですねぇ、お爺さん。でも、私聞いたことがあります。二つ隣の村の人が鶴を助けたら、その鶴が、若く美しい娘の姿で恩返しに現れ、自分の羽で綺麗な反物を作ってくれたそうですよ」
「何と、ホントか、婆さん」
「ホントかは知りませんけど、でも一時期流行った噂ですよ。その反物はとにかく高値で売れて、その人は大金持ちになったとか」
「大金持ちッ。ならすぐ開けるぞ、婆さんッ」
そう言ってお爺さんは戸を開けました。
そこにはごっつい浪人が立っていました。
「婆さんや。噂の鶴は若い娘だったんじゃな」
「ええ。そうです」
お爺さんは浪人を見て、
「チェンジじゃ」
戸を閉めました。
「待ってくだされ。待ってくだされ。拙者、鶴にござる。雄なだけでござるッ」
そんなこんなで、お爺さんは鶴の浪人を家に置くことにしたのでした。
最初のコメントを投稿しよう!