ソドムとゴモラ

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ソドムとゴモラ

 ヘリは芝の上に着陸した。  グリーンラグーンの駐車場にワゴン車が停まっている。 「車内でハコチョーがお待ちだ」  リキマルが言った。 「ハコチョー、タクヤを連れてきました」 「ほう……どうだ?達者でやっているか?」  ハコチョーは後部席でモニターとにらめっこしていた。 「ハコチョー!一体どういうつもりだ?たかが警部補のあんたが何故、指揮を?警部以上じゃないと命令権ないだろ?」 「キサマ!失礼だぞ?」 「俺、タクヤじゃなくて……タクミなんですけど?」 「どっちだっていいだろ?」 「リキ、外れてくれ」  失言隊員を車外に出してドアを閉めた。 「全てを話そうじゃないか?私は本当は警部補なんかじゃない……階級は警視正だ」  警視正ってゆーと警視庁だと捜査一課長や参事官クラス、警察署だと署長クラスだ。巡査から警視までは地方公務員、警視正以上は国家公務員だ。 「エリートのアンタが何でこんなド田舎に?万引きくらいしかない平和な街だ……何もなくてツマラナイ街だがな?」 「この街の正体をおまえは知らないようだな?」 「教えてくれ?馬鹿でも分かるように」 「ここは戦前、軍の街だった」 「そんな……しかし、誰もそんなこと……資料にもなっていない」 「封印されていたのさ……当時の役所、イヤ、帝国にな?この街では戦に備えた戦闘機や戦車が造られていた。しかし、開戦直前に洪水に遭い、全部飲み込まれてしまった」 「まるでソドムとゴモラだな?」  旧約聖書の『創世記』19章に登場する都市で、天からの硫黄と火によって滅ぼされた。滅亡の象徴だ。 「話はまだある。洪水、そしてその後の戦争によってゴーストタウンと化したこの街では、働く所もなく、食う物もなく餓死者が相次いだ。そこへ神、イヤ、悪魔からの恵みがあった」
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