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人質
「悪魔からの恵み?」
「全滅だと思っていた軍工場が1つだけ残っていたんだ……それを見つけた軍の生き残りは銃を使って民から飯や金を奪い、さらに武器を売って金にした。それを指揮していたのが町長だったんだ」
神室耕一郎は95歳、去年娘が生まれたらしい。
「なんて酷い話だ」
「そして神室は罪を逃れるために、その証拠を街の底に沈めた」
「まさか、2度目の嵐が来たとか?」
「イヤ……どうやら、この街にある建造物の下に埋まっているらしい」
「それはどこ?」
「それが分からんのだ……今の話をしてくれたのはクーデターの生き残りなのだが、財宝の在り処を答えぬままあの世に逝っちまった」
モニターには覆面姿の3人の集団が銃を手に会議室を占拠し、街の人々を人質に取っている。
「フンッ、コイツらが60年前の再現をしているようだ。ったく、武器庫の隠し場所なんてコッチが知りたいくらいだ。
どうやらクロックは街のどこかに眠っている財宝を狙っているらしい。
「しかし、アンタの捜査と俺の復讐に何の関係が?」
「おまえの学校の校長が生き残りの1人に接触していたことが分かった。校長から詳細を聞き出せ、その際に復讐も出来る。一石二鳥だろ?」
「俺を餌にしたな?」
「おまえみたいなヒヨッコにいいようにされてたまるかよ?さぁ、どうする?我々に協力するかね?」
「しないといったら?」
「キサマを逮捕するだけだ。警官殺しは罪が重いぞ?死刑確定だ」
「コッチにはアンタの賄賂ってゆー切り札がある」
タクミはニタリと笑った。
そのとき頭に冷たいものを感じた。
ハコチョーが銃を手にしていた。
グロック19拳銃。グロック17をコンパクトにした銃だ。SATに配備されている。
「もう1度聞く、するのか?しないのか?」
「しっ……します」
酷い刑事だ。捜査の為にかよわい少年を利用するとは。
「それでいいのだ……」
バカボンのパパかよ?
そのとき銃声が聞こえた。
画面に映っていた1人の老婆が頭から血を噴き出して死んだ。
確かにショックだった。
しかし、悲しくはなかった。
その老婆は近所に住んでいるヨシ子って人で、何かにつけて人に文句をつけてきた。万引き事件が起きたときも、店の近くにタクミがいただけで犯人にしてきた。
あの女のせいで敵が増えた。
「人質が殺されたぞ!突入班、潜入はまだか!?」
《こちらC班……バリケードに手こずり……現在ロビーです》
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