俺と彼女のすれ違い

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 きれいに手入れされた爪や手からは想像できなかったが、くるみは意外にも料理が上手で家庭的だった。  何度か手料理を食べたが、中でも母親直伝だというグラタンは絶品だった。 「うち、共働きだったからお母さんも忙しくて、普段はお惣菜で済ませることもあったんだけど、お誕生日の時だけは手の込んだお料理を作ってくれて。わたしはグラタンが一番好きだったから、レシピを教えてもらったの」  美味しいとうなる俺に、くるみは照れ臭そうにそう話してくれた。 「そっか。じゃあこのグラタンは特別な料理なんだ」 「うん。昔はお誕生日しか食べられなかったから」  苦笑いを浮かべ、くるみは続けた。
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