俺と彼女のすれ違い

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     * 「おい、聞いたか?今日、本社から専務が幹部連中引き連れて来るらしいぜ。いよいよ、ヤバいんじゃないのか、ウチも」  先輩の竹中さんから物騒な話を聞いたのは、朝一の会議が始まる前のことだった。  黒澤商事(うち)は、黒澤財閥の関連企業のひとつで、本社というのはグループ企業のトップである黒澤ホールディングスを差す。  専務というのは、黒澤一族の次男である黒澤一成だ。  普段は滅多にお目にかかれるものではない。俺も数年に一度催される創立記念のパーティーでしか見たことがない。  そんな雲の上にいるはずの人間がわざわざ出張ってくるのだから、事態はかなり深刻なのかもしれない。
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