俺と彼女のすれ違い

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 商社には、事業領域が広範で「カップ麺から航空機まで」と言われる総合商社と売上比率の50%以上が特定の商品である専門商社とがある。  うちは前者にあたる。  近年、総合商社はトレーディング事業(輸出入の商取引)よりも事業投資をメインに収益を上げていた。もちろん、うちもそうなのだが、その投資部門において巨額の予算を投じて買収した海外の企業の業績が芳しくないというのだ。  このままいけば赤字は免れない。  この責任を誰が取るのかで、うちの経営陣は揉めていた。  見るに見かねて本社から専務がお出ましになる、ということだろう。  トレーディング部門にいる俺には直接関係ないことだが、会社自体が経営不振に陥れば俺も他人事ではない。  朝から会社全体が一定の緊張感に包まれていた。
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