俺と彼女のすれ違い

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「ううん!そんなの気にしないで。わたしは来てくれただけで……嬉しいから」  玄関で詫びる俺にくるみは言った。  帰り際、しゅんとするくるみを見るのが好きだなんて言ったら、悪趣味だと思われそうだが、切ない表情を浮かべるくるみを見ると俺は安心できた。 「じゃあ、あともう少しだけ」と言いたいのを必死で堪え、その場でくるみを抱きしめた。  朝まで一緒にいたい気持ちは山々だったが、ブレーキが利かなくなったら困る。  大の男が恋愛にのめり込んで仕事も手につかなくなるほど無様なことはない。 「ありがとう。次は時間のある時にゆっくり来るから」 「うん。連絡待ってる」   そう言ってくるみは俺の背中に手を回し、力を込めた。
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