俺と彼女のすれ違い

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     *  実際には倒産の危機、というほどでもなかったが、本社から専務様がおいでなすったことで、社内には不穏な空気が漂い、うちも時間の問題なのではないかという噂が飛び交うようになった。  そんな社員たちの不安が悪い状況を引き寄せたかのように、関係ないと思っていたうちの部門でも大口のメーカーが経営不振に陥り、取引がすべて白紙に戻るという事態に直面していた。  億単位の取引をしていたメーカーだったので、うちの痛手は相当なものだった。  そこへ追討ちをかけるように、ライバル会社がここぞとばかりに有能な社員をヘッドハンティングし始めた。  まさかとは思ったが、この俺にまで他社(よそ)から声がかかった。
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