嘘とジェラシー

俺と彼女のすれ違い

　商社は所詮、商品を右から左へ流すだけの仕事なので自分ではどうすることもできず、ただただ双方に頭を下げ、損害賠償請求を回避する方法を探すしかない。

　こういう危機に直面した時のために、人脈が必要になる。日頃からサプライヤーである様々なメーカーの人間を接待しているのはそのためだ。在庫を持っているメーカーに救われることも少なくない。

　無意味に思える飲み会やゴルフも決して侮れない。

　ここへきて、俺は思いがけず目が回る暇もないほど忙しくなってしまった。

　くるみのことを忘れる日はなかったが、会いたくても物理的に無理な日々が続き、ＬＩＮＥのメッセージを読む余裕さえなくなっていた。