俺と彼女のすれ違い

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『明日シンガポールへ行くことになった。約束破ってばっかりでごめん』  この数ヶ月の間にもう何度目だろう。デートの約束は破るためにしているようなものだった。  あまり心配をかけたくはなかったし、愚痴っぽくなるのも嫌だったので、くるみには今の状況を詳しく伝えてはいなかった。  普通ならとっくに愛想を尽かされているところだが、くるみは怒るどころか文句のひとつも言うことはなかった。  会うのが数週間ぶりになっても、くるみはいつも通り「稜サン」って嬉しそうに笑ってくれた。  もっと連絡してとか会いたいとか言ってこないのは少し寂しい気もしたが、言われたところでどうにもできない今の俺にとっては、この上もなくありがたいことだった。
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