嘘とジェラシー

俺と彼女のすれ違い

　今はちょうど、失いかけている億単位の取引の穴埋めに奔走していて、大手メーカーとの商談を何としても成功させたいと思っていたので、正直辞めた奴の尻拭いをしている暇などなかった。

　だが、賠償請求となれば事は穏やかではない。

　溜息を押し殺し、状況の確認と謝罪の準備を始めた。

　おいおい、先方って福岡じゃねえか……。おまけに材料のメーカーはインド……。

　嫌な予感しかない。

　いくら忙しいとはいえ、さすがに明日が何の日かくらいは憶えていた。

　この数ヶ月、ロクに会うこともできなかったから、せめて誕生日くらいは一緒に祝いたいと思っていた。

　ちゃんとレストランだって予約してあるし、プレゼントだって買ってある。

　明日だけは、仕事のひとつやふたつ断っても時間をつくろうと思っていたのに。