Fatal Attraction

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「いいよ、別に」  焦るオレを気に留めることもなく、彼女は涙を拭きながら言った。 「え?何が?」 「下心、あるんでしょ?」  それまでとは別人のように、彼女は冷めた口調やった。  ”こんな夜遅くまで仕事なん?”的なこと言うたのはやっぱマズかったかな。 「ど、どないしたん、急に。もしかして、酔うてる?」  あわよくばの期待はあっても、本気でどうこうするつもりはなかったから、思いがけない彼女の言葉にオレは怯んでしもた。 「嫌ならいいよ。わたし、もう帰るし」  カバンに伸ばした彼女の手を慌てて握った。
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