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福岡から戻ったとはいえ彼女の元へ飛んでいけるはずもはなく、いつも通り出社して今度は明日の商談の準備にかかった。
会社の命運が懸かっているというのは大袈裟だが、俺はそのくらいの気持ちで臨んでいた。
会社が傾けば、俺の将来も傾いてしまう。
俺の将来が傾けば、くるみとの将来も……。
今は邪念を捨て目の前の仕事に集中しようと決めた。
この時の俺は、まるで強迫観念にとらわれているかのように、仕事のことが常に頭から離れなくなっていた。
「おい、氷川。今日はもう上がれ」
「いや、でも……」
「こんな時に労基にまで睨まれたら大変だからな」
課長の言うことも尤もなので、仕方なく会社は昼までで早退した。
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