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無意識に手が俯くくるみの頬に触れていた。
顔を上げたくるみと目が合った瞬間、背中に鋭い視線を感じた。
まさかあの男……?
潔く帰ったフリをして、実は俺がくるみを咎めて喧嘩になるのを待っているんじゃないだろうか。
俺が怒って帰った後、落ち込むくるみを慰めるのが目的か?
気のせいだと思いたかったが、不思議とこういう勘は当たるものだ。
「おやすみ」
軽くおやすみのキスをするつもりが、唇に触れた瞬間、歯止めが利かなくなった。
心のどこかでは、あの男に対して「そんなに見たけりゃ見せてやる」という気持ちもあったのかもしれない。
本当に見ているかどうか分からないが、見ていればいいなと内心思っていた。牽制するほどの相手ではないかもしれないが。
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