俺とアイツの出会い

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 シャワーを浴び、遅めの昼飯を食いながら見るともなくテレビをつけると、昼時には似つかわしくない映画がやっていて思わず見入ってしまった。  ずいぶん昔に一度だけ観た記憶はあったが、情欲に溺れて遊びのオンナと上手く手を切れない愚かな男には共感できなくて、愛人のオンナが怖いということよりも男の愚鈍さに苛立った作品だった。端から遊びのつもりなら相手を選ぶべきだ。  原題の『Fatal Attraction』を『危険な情事』という邦題にしたのは上手いと思うが。  不倫や浮気など自分には縁遠いと途中でテレビを消し、準備をして出かけた。  こんなにゆったりとした気持ちで外を歩くなんて、いつ以来だろう。  吹く風の冷たさにも枯れた木々にも気がつかずにいた。
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