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青白い夜明け前の空気は澄み、街はひっそりと呼吸をしていた。
凛とした冷たい風の中を歩きながら、白い息を吐いた。
朝とも夜とも言えない曖昧なこの時間が好きではあるが、こんなに早く彼女の家を出るつもりはなかった。
せめて彼女が目を覚ますまでいれば良かったのだが、俺は少し動揺していたのかもしれない。
薄く唇を開き、うつ伏せで無邪気に眠る彼女の寝顔を見ているのが苦しくて、とても眠れそうにはなかった。
彼女が俺への当てつけであの椎名とかいう男とデートをすることぐらいは想定内だった。
怒るつもりも責めるつもりもなかった。
最後まで彼女はあの男と会っていたことを認めようとはしなかったが、一緒にディズニーランドへ行った友達がアイツであることはほぼ間違いないはずだ。
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