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悶々としている俺の腕の中でくるみは寝息を立て始めた。そっと覗き込むと、口元に微かな笑みを浮かべくるみは幸せそうな顔で眠っていた。
柔らかい頬に触れると胸の奥が熱くなって、心臓が絞られたように苦しくなった。
はにかみながら好きだと言ってくれたくるみの気持ちまで疑ってしまう前に、俺は部屋を出た。
体の芯まで凍えてしまいそうな夜の道を歩きながら、冷静になってこれまでのこと、そしてこれからのことについて思いを巡らせた。
できることならば、椎名という男をただの男友達だと思いたい。思いたいけどそうできないのは、俺がくるみに裏切られても仕方がないような付き合い方しかできていないからだ。
俺がくるみと同じ立場になれば、とっくに浮気するどころか別れていると思う。
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