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「本当はもっと早くに伝えたかったんだけどさ。氷川はずっと忙しそうだったし、俺も忙しくしてたからなかなか言い出せなくて。……すまん。俺、三末で会社辞めることにしたんだ」
尊敬している先輩の潮谷さんから思いがけない報告を聞いたのは、ヨーロッパへ発つ直前のことだった。
会社が大変な時に辞めるような無責任な人ではないので、俺は驚きを隠せなかった。
「え?そんないきなり……何かあったんですか?」
潮谷さんは苦笑いを浮かべ、会社を辞めようと思った出来事を話してくれた。
「会社がこういう時だからさ、忙しいのは覚悟してた。俺が何とかしなきゃって変な使命感みたいなものもあってさ。精神的にも肉体的にもかなりキツイけど、その分やりがいもあったし……」
俺と同じだ……潮谷さんの話を聞きながら俺は心の中で頷いていた。
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