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「そんなことで辞めるのかって思うかもしれないけど、娘にとって父親は俺しかいないからさ。誰かに代わってもらえるものじゃないんだ。だから……」
責任感の強い潮谷さんにとって苦渋の決断だったことがよく分かった。分かるだけに俺も辛かった。
「分かりました。潮谷さんの代わりは俺がやりますから」
「すまん、氷川。俺はお前と一緒に仕事ができたことを誇りに思ってる。後輩だけど、尊敬できる奴だと思ってた。本当はもっと一緒に仕事していたかったんだけどな」
尊敬する先輩からの言葉に胸がいっぱいになった。
「お世辞でも嬉しいです。ありがとうございます。俺も潮田さんのことは入社した時からずっと尊敬していました。一緒に仕事ができてよかったです」
お礼を伝えると、潮谷さんは「よせよ」って涙目で照れ臭そうに笑った。
潮谷さんの話は何だか他人事と思えず、俺の決意をより一層強固なものにした。
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