俺の知らない彼女

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「ああ。もし俺の言葉が通じなかったり、おかしなことを言ったりした時は教えてほしいんだ。大事な買い物だから」 「大事な買い物って、まさか婚約指輪とかじゃないですよね?」  冗談めかして矢島が訊いた。どうして半笑いなのか分からないが、図星だった。 「いや。そうだけど」 「ええーっ!氷川さんって彼女いたんですか?」 「いたらおかしいのか?」 「いやぁ、何て言うか……オンナはいっぱいいそうだけど、結婚とかそういうのは興味ない人だと思ってたんで」  ショーケースを眺めながら、後輩の失礼な発言にややムッとしていた。  これが、人生で最も大事な買い物の時でなければ、矢島を問い詰めたいところだが、今は聞き流しておくことにする。
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