俺の知らない彼女

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 今回も、この指輪にしようと思ったきっかけはくるみの部屋に置いてあった雑誌だった。彼女は隠していたつもりだろうが、ご丁寧にページの端っこが折ってあったので、このブランドの物が欲しいことは一目瞭然だった。  さすがに、今日購入した物があの雑誌に載っていた物かどうかは憶えていないが。 「ちょ、ちょっと、氷川さん!」  満足げな俺に向かって、矢島が焦った口調で声をかけてきた。 「何?俺、何かおかしなこと言ったか?」 「いや、おかなしなこと言ったっていうか、ホントにその指輪でいいんですか?その値札、日本円じゃないですよ?」  小声で何を言うかと思えば……。自信がないとは言ったが、全く分からない訳ではない。商社マンが値札も見られないなんて、笑い話にもならない。
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