俺の知らない彼女

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「それぐらい分かってる」 「だったらいいんですけどね。まさかそんなに高い物買うと思ってなかったんで……」  ただのプレゼントならともかく、婚約指輪を買う金を出し渋るつもりはなかった。   今まで不平も不満も言わず、我慢して俺についてきてくれたくるみのことを思えば、これぐらい決して高い買い物ではない。  くるみは俺の気持ちを疑っているようだし、これを渡せば俺がくるみのことをどれほど大事に想っているか伝わるはずだ。  もちろん、人の気持ちは金額ではないが、婚約指輪なんていい加減な気持ちで買える代物ではない。  ある意味では人生を懸けて買う物だと思っている。  俺は不器用だし、自分の気持ちを上手く伝えられるタイプではないが、今度ばかりはくるみにきちんと想いの丈を伝えようと心に決めていた。
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