俺の知らない彼女

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 プロポーズすれば、くるみの不安だっていくらか解消されるに違いない。  そうすれば、もうあんな男と会う必要もなくなる。  綺麗に包装された品物を受け取る時、ふくよかな女性店員が俺に向かって”この指輪を贈られる女性は幸せ者ですよ”と言って笑った。  ありがとうとだけ言えばよかったのかもしれないが、”幸せなのは僕の方ですよ”と無意識のうちに本音を口にしている自分がいた。  これを渡した時、くるみはどんな顔をするのだろうと想像するだけで、堪らなく幸せな気持ちになれた。  くるみにはいつ渡そうか。何て言おうか。  柄にもなく浮かれていた俺は、帰国後に起こることなどまだ知る由もなかった。
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