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「もうくるみんのこと好きじゃないんやったら、オレにちょうだいよ。お宅はあのホステスの姉ちゃんとええ感じみたいやし」
とうとう椎名は本音を口にした。にこやかに自己紹介をしたあの時から、奴の狙いはひとつだった。
奴はくるみが欲しくて俺に近づいてきたのだ。
「フッ。欲しけりゃどうぞ。……なんて言うと思ってんのか?」
こうして椎名と対峙することを、俺は心のどこかで望んでいたのかもしれない。
驚くほど冷静な自分がそこにいた。
目を閉じて大きく息を吐くと、俺は覚悟を決めた。
お前なんかにくるみを奪われる訳にはいかない――。
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