彼女のためにできること

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 事業領域が広範で、扱う物は”カップ麺から航空機まで”と言われる総合商社に勤務し、国内外問わず多種多様なメーカーを訪れ、数えきれないほど多くの人間と関わってきたつもりだったが、ダンススクールの講師とは出会ったことがなかった。  口ぶりからして、恐らく向こうもそうだろう。  今まで生きてきた中で、関わることもなかった世界の人間だ。  普通のサラリーマンでないことは察しがついていたが、職業を聞いてやたらと身なりが派手だったことに納得がいった。  くるみと同じ年齢のわりには口のきき方も知らず、態度は横柄で、ガキ丸出しだった。  こんな知性の欠片もない男に彼女を奪われそうなのかと思うと、総毛立つほど不愉快だった。 「とりあえず3人で話せるところに場所変えよう」  街中で立ち話する内容でもないので、仕方なく移動を提案した。 
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