彼女のためにできること

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「手なんか出してないけど」 「この期に及んで往生際が悪いな」 「えらい自信満々やけど、人を疑うからには何か証拠でもあんの?」  よほど自信があるのか、椎名は締まりのない顔でニタニタと笑っていた。  証拠などあるはずがないと高を括っているのだろう。  確かに、椎名とくるみがホテルに入るところを撮影した写真がある訳ではないし、彼女のスマホを勝手に見る趣味もないので確たる物証は存在しない。  それでも、俺にはひとつだけ思い当たる節があった。  既に消えているはずなので、証拠能力はないだろうが。 「キスマーク……つけただろ?」  ネックレスか何かにかぶれただけだと思いたかったが、椎名のこの自信に満ちた態度が雄弁に物語っている気がした。  ”オレのモノにしてやった”と。
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