彼女のためにできること

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 こんな時に冗談を言うなんて、よほど神経が図太いのだろう。あまりに支離滅裂で意味不明で、呆気に取られてしまった。 「あ、ベビーシッター言うても、面倒見るのは子どもちゃうで。くるみんのことやで」  抑えていた感情が沸々と湧き上がってくる。  何を言ってるんだ、この男は。気は確かか? 「お前いい加減にしろよ!こっちは殴りたい気持ちを必死で抑えて、冷静に話し合おうとしてるんだぞ。ふざけるんならもう帰ってくれよ」   怒り心頭に発する俺を嘲笑うかのように、椎名は常識では考えられないような仰天の提案をした。 「この際やからはっきり言うけど、オレはくるみんが好きや。でも、くるみんはあんたが好きで別れたくないねんて。せやからまあ、苦肉の策っていうんかな。あんたが会われへん時に代わりにお相手する、まさにベビーシッターってことで。もちろん、報酬はいらんけど」  ドヤ顔で椎名はニヤリと笑った。
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