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他の女ならともかく、忠実で従順なくるみが俺を裏切るなんて……。
これが”飼い犬に手を噛まれる”ということなのか。
大事な彼女のことを自分に都合よく”ハチ公”などと思っていた傲慢な男には、御誂え向きの結果じゃないか。
いざとなったら大胆なことをする女だということは、俺が一番よく知っているはずだったのに。
必死で色んなものを呑み込み、ベッドから立ち上がった。
玄関に行き、スーツケースを開けると宝石店の紙袋から中身を取り出した。
手の中に納まるこの小さな箱を、こんなに切ない気持ちで握り締めることになるなんて想像もしていなかった。
「これ、向こうで買ったんだ。今抱えてる仕事がひと段落したら、くるみにプロポーズしようと思ってた」
部屋に戻り、テーブルの上に小さな箱を置くとくるみは号泣した。
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