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椎名は激しく怒っているくるみを抱きしめると、どんなにくるみが暴れようと離さなかった。
お前は本当にくるみのことが好きなんだな。
悔しいけど、くるみはきっとお前といた方が幸せになれるんだと思う。
お前にだけは渡したくなかったが、俺にはくるみを幸せにしてやることはできない。
一緒にいても悲しませるだけだと分かったから、俺はくるみと別れることを選んだ。
彼女のためにできることは、もうそれしかなかった。
「さようなら、くるみ……」
小さく呟き、俺は静かに踵を返した。
最後の力を振り絞って自宅に戻り、ベッドへ向かうとテーブルの上で一際存在感を放っている小さな箱が目に留まった。
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