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体中の空気を吐き出すみたいに大きな溜息をつき、ソファーに勢いよく腰を下ろした。
「夢に決まってんだろ……」
愚かな自分が情けなくて笑えた。
俺はもう二度とくるみのグラタンを食べることはできないし、キッチンに立つくるみをこうしてソファーに座って眺めることもない。
可愛いくるみはもういない――。
『好きよ、稜サン』
頬を赤らめてはにかむくるみの姿が脳内で何度も再生される。
「俺も……好きだよ、くるみ」
どこにも届かない声が冷たい部屋に虚しく響いた。
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