俺と彼女とアイツ

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 普段はその存在をあまり意識しなくても、生きていく上で欠かせない大事な臓器を失ったような恐怖と痛みが俺を蝕んだ。  一年近く前からロクに会う時間もなく、付き合っていると言えるのか分からない状態だったし、例えくるみと別れても自分の生活に支障はないと思っていたのに、彼女は大切な臓器のように俺の中にいて、生きていく要になっていた。  恋愛が人生のすべてだとは言わないが、くるみを失った途端に光が消えてしまったような気がした。  仕事を休んだり、手を抜いたりすることはないが、モチベーションが下がっていることは確かだった。  息つく暇もないほど忙しく働いているのは、一体何のためなんだろう。  喪失感を埋めたくて仕事に逃げるつもりでいたが、今まで以上にがむしゃらに働く意味を見つけられそうにはなかった。
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