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己の女々しさに辟易としながらも、尊敬していた先輩が抜けた仕事の穴も大きく、日々埋めることに奔走していた。
ある日の商談後、客先の都合で接待の飲み会がなくなり久々に早めに帰宅した俺は、衝撃的な光景に足を止めた。
マンションの前に、茫然と立ち尽くすくるみの姿があった。
あれからもう数週間が経とうとしているのに、一体どうしたというのだろう。
しばらく様子を見ていたが、彼女は何をするでもなくただじっと俺の部屋の辺りを見上げているようだった。
こんな時間にいるはずもないと思っているのだろう。彼女は俺に気づくことなく、とぼとぼと帰って行った。
声をかけた方がいいのか迷ったが、たまたま通りがかっただけかもしれないのに、それも自惚れているような気がして止めた。
俺に会いに来たのでは、などと期待したところで虚しいだけだ。
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