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食欲があるのか分からないし、くるみに食べたい物があるか訊いたのだが、何でもいいと言われたので、仕方なく勝手にうどん屋を選んだ。
俺はもともと無口な方だし、くるみもおしゃべりというほどでもなかったので、付き合っていた頃から話が弾んで止まらないということはなかったが、今は別れた気まずさも手伝って、ほぼ会話らしい会話もなかった。
注文を待っている間はまるで相席のようだった。
「なんだ。ちゃんと食べれるんじゃないか。食べなきゃダメだよ」
ちゃんと食えるのか心配だったが、彼女は運ばれてきたきつねうどんを普通に食い始めた。どうやら、摂食障害などではないらしい。
「うん。明日からちゃんと食べる」
その時見せた笑顔は、いつものくるみのように思えてホッとした。
店を出ると、くるみの家に向かって歩き出した。
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