俺と彼女とアイツ

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「来てくれてすごく嬉しかった。ありがとう。仕事頑張ってね」  涙目で嬉しいなんて言うな……。  仕事頑張ってね、なんて……。  断腸の思いでマンションを出ようとした時、俺の進行方向とは反対の方から歩いて来る男が見えた。  見つかる前に帰らなければと思うより先に、俺は自分でも信じられないような行動に出てしまった。  俺は走って戻ると、くるみを抱き寄せた。  こんなことをしたら、アイツを怒らせることは目に見えていた。  それでも、今からアイツがここに来て、こうしてくるみに触れるのかと思うと我慢ならなかった。  手離そうと決めたのに、どうして今さら……。自分でも不思議でならなかった。
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