俺と彼女とアイツ

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 さっきは慌てていたので中身も確認せず鞄を引っ掴んで出て来たが、パソコンが入ったままだったのは幸いだった。  必死で脳みそを仕事モードに切り替えようとしているが、パソコンに触れている手はまだくるみの感触をはっきりと覚えていて、俺の集中を阻害した。 『来てくれてすごく嬉しかった。ありがとう。仕事頑張ってね』 『まだ……忘れられないから……』  クソッ。利益率なんか計算できるか。      * 「今年も暑いっすねぇ。これ、40℃越えてるんじゃないですかね」  取引先からの帰り、後輩が汗だくで嘆いていた。 「ってか、氷川さん全然汗かいてないっすね。暑くないんですか?」 「いや、暑いよ」  別に対策をしている訳でもないのに昔から何故だか顔にはあまり汗をかかないので、平気そうに見えるらしいが俺も人間なので夏は暑い。
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