俺と彼女とアイツ

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 それは、傘もないのに急な豪雨に見舞われた日のことだった。  海外出張や接待が続き、このところ日付が変わる前に家に帰っていなかったこともあり、その日は客先から直帰でいいと言われていた。  そこまでは良かったのだが、駅から家へと歩いている途中、まさにバケツをひっくり返したような激しい雨が降ってきた。地面を跳ね返るような雨粒の勢いに、どこかへ避難しようかとも思ったが、雨に濡れたからと言ってどうなるものでもない。  何の効果もないなと思いつつ鞄を傘代わりにして走り、マンションの前まで来たところで足が竦んだ。 「あれ?くるみ?」  もう何ヶ月も会ってはいなかったし、場所が場所だけに素直に驚いてしまった。 「え、稜サン……!?」  「こんなとこでどうしたの?」
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