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「ああ、ちょっと買い物してたから。稜サンこそ、こんな時間にどうしたの?」
淡い水色の小さな傘の中で、彼女は手に持っていたビニール袋を持ち上げて笑った。
以前ほど気まずさがないことに時間の流れを感じた。くるみの頬も少しふっくらしたように見える。
「今日は得意先から直帰でいいって言われたから。けど、急に雨に降られてさ。傘持ってなかったからずぶ濡れだよ」
「そうなんだ。じゃあ早く着替えないと風邪引いちゃうね」
そうだねって返事したら、それ以上会話はなくなって黙って帰るしかなくなる。元カノとの再会なんてその程度でいいはずなのに、俺は咄嗟に嘘をついていた。
「うん。けど、それはもう手遅れかも」
「え?」
「さっきからずっとゾクゾクしてるから」
「えー!だったら、早く中に入らなきゃ。家に風邪薬とかある?」
「いや、ない」
「じゃあ、わたし買ってくる!」
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