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しばらく雨の中で立ち尽くしていたせいで、本当に風邪を引いてしまいそうなほどびしょ濡れになってしまった。
病気をしても仕事を休めないという環境のお陰か、不摂生をしている割に身体は頑丈で、残念ながら雨に濡れたぐらいで熱を出したりはしない。
雨水で少し重くなったジャケットを脱ぐと、中のワイシャツやネクタイまでぐっしょりと濡れていた。
髪の毛からもぽたぽたと滴が垂れている。
腕時計とネクタイを外し、ワイシャツを脱ぐとタオルで体や髪を拭いた。
体の表面はひんやりとしていたが、内側は熱くなるばかりだった。
どうしてくるみはこの雨の中、わざわざ薬まで買いに行ってくれたんだろう。
単なる情か、それとも……。
いや、ただの親切を深読みするのは止めよう。
優しくされたぐらいで勘違いするなんて、いい歳をした男がみっともない。
彼女は元々、困っている人を放っておけない優しいところがある。
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