雨夜の情事

3/29

8252人が本棚に入れています
本棚に追加
/1603ページ
 思考を変えるためにシャワーでも浴びようと思っていたら、ドアホンが鳴った。モニターには気まずそうなくるみの姿が映っていた。 「ありがとう。早かったね」  何も考えずにドアを開けると、くるみは酷く驚いた後、顔を真っ赤にして目を逸らした。  半裸なのが原因だとすぐに分かったが、この程度のことで頬を赤らめるなんていかにも彼女らしい。  少しくらい擦れて可愛くなくなっていたらいいのにと思う。 「シャワー浴びようかなと思ってたとこだったから。ごめん。こんな恰好で」 「あ、ううん!あ、あのうこれ!」  目を逸らしたまま、くるみは手に持っていたビニール袋を俺に差し出した。 「ありがとう」  受け取った瞬間、彼女と手が触れた。 「手、冷たいね。くるみもびしょ濡れだもんね。これで体拭いて。今、コーヒーでも淹れるから」  首から提げていたタオルをくるみに渡し、コーヒーを淹れようと彼女に背を向けた。
/1603ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8252人が本棚に入れています
本棚に追加