8252人が本棚に入れています
本棚に追加
/1603ページ
まるで、どこかの誰かさんが怒鳴り込んで来たかのような絶妙なタイミングに、苦笑いするしかなかった。
「タイミング良すぎて、アイツに触るなって怒鳴られたみたいだな」
笑って流そうとした俺をくるみは黙って見上げていた。うるうるとした黒目がちの瞳が何かを訴えかけている仔犬のようだった。
ピタリと嵌るように目が合うと、胸の奥が疼いた。
どちらからともなく、自然と引き寄せられていく。
顔をゆっくりと傾け、瞼を半分くらい下ろしたところで、今度はくるみのスマホが床で振動し始めた。
なんなんだ、さっきから。まさかアイツ、盗撮してるんじゃないだろうな?
ふと我に返ると、くるみは逃げるように電話を取りに行った。
バッグからスマホを取り出すと、彼女は相手を確認しただけですぐに戻してしまった。
今さら隠さなくても、電話の主なら察しがついているのに。
最初のコメントを投稿しよう!