雨夜の情事

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「え、出なくていいの?」 「ああ、うん。大丈夫。後でかけ直すから」  彼女はそう言って苦笑いを浮かべたが、電話は切れてもすぐにかかってきて鳴り止みそうにはなかった。相変わらず、しぶとい男だ。 「フッ。そんなにしつこいなんてアイツだろ?出ないと出るまでかけてくるんじゃない?」  俺から声をかけなければ出にくいだろうと思い、電話に出るように促した。 「じゃあ、ごめんなさい」  断りを入れると彼女はスマホを持って、俺から少し離れたところで電話に出た。  何を言っているのかまでは分からないが、聞く気がなくてもアイツの大きな声がスマホから漏れていた。  さすがに二人はもう付き合っているのだろうか。  自分から電話に出るように促したものの、俺に背を向けアイツと二人きりで話している後姿を眺めていると、目の前にいるくるみがどんどん遠ざかって行くような気がした。
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