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手を伸ばせば届くところにいるのに、もう触れることは許されない。
焦りにも似た気持ちが俺を支配する。俺はそっとくるみの背後に忍び寄ると、断りもなく抱きしめた。
「……ひゃっ!」
電話中にも関わらず、くるみは驚いて声を上げた。自分でもおかしなことをしているのは分かっていたが、沸き起こる衝動を抑えることができなかった。
アイツが知ったらどう思うだろう。
今度こそ殴りかかってくるかもしれない。
悪い事をしているという認識はあったが、それと同時にこれがビデオ通話か何かでアイツに見えればいいのにという気持ちもあった。
俺も相当嫌な奴だ。
「アイツはマメなんだね」
通話を終え、どうしていいか分からずに固まったままのくるみに声をかけた。
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